2012年2月17日に閣議決定した「社会保障・税一体改革大綱」には医療・介護サービス保障の強化、社会保険制度のセーフティーネット機能の強化について次のように記載されています。
1.高度急性期への医療資源集中投入など入院医療強化、地域包括ケアシステムの構築等を図る。
2.どこに住んでいても、その人にとって適切な医療・介護サービスが受けられる社会を目指す。
社会保障の改革については、「医療サービスの提供体制の制度改革」「地域包括ケアシステムの構築」の2つに分けられており、2025年までの目標数値などが示されています。
これらを要約すると次のようになります。
<入院医療の機能分化・強化と連携>
急性期への医療資源集中投入
亜急性期、慢性期医療の機能強化等
<在宅医療の充実>
看取りを含め、在宅医療を担う診療所等の機能強化
訪問看護等の計画的整備等
<在宅介護の充実>
地域包括ケア体制の整備
ケアマネジメントの機能強化等
外来医療から在宅医療にシフトしようとする傾向が鮮明に出ており、病床については、現行の病床を大きく再編し、高度急性期病床を創設することとしています。
急性期とは、病気を発症して間もなくで、救命や急激な病気の進行を防ぐための手術などの治療が必要とされる時期のことです。
この高度急性期病床のスタッフ数を現行の一般病床の2倍に増やし、医療の単価も2倍近くに引き上げ、平均在院日数を2~3割短縮します。
病床の再編と平均在院日数の短縮が実施されれば、外来と在宅医療の市場も変化することが予想されますが、2025年までに外来を5%削減し、在宅医療を約7割増やす計画が示されています。
急性期病床は設備の整った総合病院にあるケースが多く、急性期病床の医療費が上がることによって、街の診療所が行う診療の一部が初診料に包括されるなど、こうした診療所にとって事実上の診療報酬引き下げが行われています。
つまり、在宅医療を担う診療所等の機能強化といいながら、診療所の報酬を引き下げているのですが、病床の医療費を上げ、外来診療の削減を目的とするのなら、診療所の報酬もある程度手厚くする必要があります。
ただ、患者が支払う医療費もその分高くなりますが、街の診療所の経営状態が悪くなると、地域医療の維持にはマイナスになるので、その兼ね合いは難しいところです。
患者である消費者としては、今後の政策の動向を興味をもって監視することが重要になります。