国民医療費は、3年連続で1兆円以上の増加を示しています。
2011年度の国民医療費は38.6兆円で過去最高額を更新し、13年度には40兆円を突破することが確実視されています。

厚生労働省の推計によると、年金を含む社会保障給付費総額は25年度に149兆円とのことです。
12年度比36%増え、同時期の国内総生産(GDP)の増加率27%を上回っています。
政府はこれまで給付の不足分を国債発行でまかなってきましたが、国の借金はすでに1000兆円を超え、将来への先送りは限界となっています。

「税と社会保証の一体改革」への取り組みは、増え続ける給付の是正を行うのも重要な目的の一つでした。
消費税増税が決定した一方で、給付抑制策は政府の思惑どおりには進んでいないようです。

一例としては、15年度から実施を目指す介護保険改革で、症状の軽い人向けの介護予防サービスの市町村への移管を打ち出していましたが、市町村の反発に合い、移管対象を日帰りの介護サービスに切り替えたことなどがあります。
これによって、1600億円程度見込んでいた給付費抑制効果は1000億円程度に縮小されたようです。

こういった綱引きは、政府や自治体の財政事情が前面に出て行われている感があります。
自治体に移管した場合にサービスを受けている人にどういうメリットがあるのか、といった議論が実際に行われているにしてもなかなか見えてきません。
医療費についていえば、無駄な医療費の抑制は歓迎するところですが、必要な医療サービスまで削減してしまうことが懸念されます。