診療には、健康保険の対象となる保険診療と対象外の自由診療があります。
患者の立場で見た場合、保険診療は非課税なので消費税はかかりませんが、自由診療には消費税がかかることになります。
「保険診療には消費税がかからない」という認識自体が患者である消費者に行き渡っていないという現状がありますので、この点はしっかりと理解しておく必要があります。
多くの一般病院は傷病の治療などの保険診療が中心で、美容外科などは自由診療が中心となります。
診療を行うための設備や医薬品などの仕入れには消費税がかかります。
自由診療を行っている美容外科などの場合、この消費税分を患者に転嫁できますが、非課税の保険診療を行っている病院の場合、患者には転嫁できないことになります。
また、課税売上割合が95%以上であれば仕入税額控除制度を適用できるので、自由診療中心の医療機関はダブルで恩恵が受けられることになります。
傷病の治療など必要な医療を提供することが目的の病院においては、現行のような非課税方式では、消費税が上がると病院経営はさらに厳しいものとなり、経営が立ち行かなくなる病院が多数出てくる恐れがあります。
この事態を回避するには次のような対策が考えられますが、いずれにしても抜本的な制度改革が必要であると思われます。
<仕入税額控除制度を全診療に適用>
「仕入税額控除制度」の適用を受ければ、課税対象となる仕入税額の全額が控除できますが、この制度の適用を受けるには課税売上割合が95%以上である必要があり、諸費税が課税される自由診療が売上の大部分を占める美容外科などには適用される可能性がありますが、非課税の保険診療が売上の大部分を占める一般病院には適用されません。
これを保険診療にも適用できるようにすれば、一般病院の負担はかなり軽減されるはずです。
<保険診療にも消費税を課税>
これを実施すれば、今まで非課税であることを知らなかった消費者も含めて、かなりの反発が出ることが予想されますが、実は2014年4月の消費税アップ時にはこれと同じような措置が実施されています。
厚生労働省は、同時期に行われた保険点数の見直しで、初診料を270点から282点にアップしましたが、その理由について、消費税のアップ分を診療報酬に上乗せしたと説明しています。
診療全ての点数がアップしたわけではありませんが、診療を受ければ必ずかかる初診料・再診料がアップの対象となっています。
消費税のアップよりは小さい幅のアップとなっているので、完全に消費税のアップ分を補完してはいませんが、消費税のアップ分を非課税のはずの保険診療に転嫁したことだけは間違いありません。