政府は2016年度にも、都道府県ごとに医療費の抑制目標を導入する方針であるとのことです。
地域別の目標としては、後期高齢者医療制度など都道府県単位で運営する制度においての適用が主となる模様です。
また、企業の健保組合、公務員の共済組合にもそれぞれ目標を設定し、それらの合計において国の医療費抑制の目安とするとのことです。
1人当たり医療費については地域格差が大きく、後期高齢者医療制度でみると、11年度の1人当たりの医療費はもっとも多い福岡県が115.3万円、もっとも少ない岩手県が73.3万円で、約1.6倍の格差があります。
まずは、診療報酬明細書(レセプト)などのデータを分析し、入院日数や薬剤の量、ジェネリック医薬品の使用状況などの地域格差を調査し、人口や年齢構成など医療費に影響を与える要素を考慮した上で、その地域における医療費の適正水準を算定し、都道府県ごとに目標を設定するとのことです。
政府は、各都道府県が目標に対して、実際にどれだけ医療費を抑えたかを毎年公表します。
特に罰則は設けないとのことですが、目標を達成できなかった都道府県は他の予算獲得などで不利な扱いを受ける可能性があるため、達成に向けて本腰を入れて取り組むことが期待されます。
また、企業ごとに作る健保組合は後期高齢者医療制度の医療費の一部を肩代わりしているため、こうした健保組合についても抑制目標を設ける見込みとのことです。
目標を達成した健保組合は肩代わりの負担を軽くし、達成できなければ重くする方向で調整を進めるとのことです。
外国においては、フランスなどがこうした仕組みを導入して、効果を上げているとのことです。
フランスでは、病院や開業医からの情報をもとに国の医療費の支出目標を設定し、開業医や私立病院、公立病院などの部門ごとに医療費の大枠を定め、それに合わせて診療単価を決めることとしています。
こうした案が出されると、「医療の質が低下する」という議論が必ず巻き起こることになります。
2006年に社会保障全体の数値目標を掲げたものの、そういった批判を浴びて2009年に撤回したという苦い経験がありますが、今では医療費の増大に歯止めをかけることはもう待ったなしの状況になっています。
医療の質を保持しつつ、医療費を抑制するという難題に立ち向かわなければなりませんが、この問題は先送りするほど解決はさらに難しくなるため、早急な対策が求められています。