交通事故による怪我の場合、加害者側の自動車保険(自賠責保険・任意保険)が適用されるケースが多いようです。
「交通事故の怪我には健康保険は使用できない」という説明をする医療機関もありますが、これは明らかな誤りで、健康保険の適用の申し出があれば、医療機関はこれを拒むことはできません。

病院が健康保険を使いたがらない理由

健康保険を適用する場合、行った医療行為を保険点数で積み上げたものを1点=10円で換算して治療費の算定を行います。
これに対して、健康保険を使わない場合、怪我の治療費については自由診療となり、基本的に治療費は医療機関が自由に決めることができます。
この場合、治療費算定の根拠として積み上げた保険点数に1点=20円~30円で算定するのが一般的になっているようです。

すなわち、自由診療にすれば、健康保険を適用する場合に比べて2~3倍の料金を請求できるということになります。

健康保険を使わない場合、患者のデメリット

加害者が任意保険に加入していない場合、自賠責保険のみの適用になります。
自賠責保険の限度額は120万円となっており、加害者に資力がなかったりすると、治療費の超過分は被害者の自己負担となってしまいます。
しかも、自由診療によって治療費が高額になるため、自己負担額がバカにならない金額になる可能性もあります。

また、被害者側に過失がある場合、過失相殺によって保険金が減額されるので、自己負担額が大きくなる可能性があります。
治療期間が長くなる場合なども、限度額では足りなくなる可能性も少なくありません。

健康保険を使う場合、患者のメリット

保険診療であれば、診療報酬を自由診療より低く抑えることができる上に、7割は健康保険が負担してくれますので、窓口負担分を自賠責保険に請求し、その残った枠を違う損害の填補に充てるなどのことができます。
つまり、自賠責保険の120万円の枠を有効に利用することができるのです。

被害者側にわずかでも過失がある場合は、とにかく自分の健康保険を使う必要があります。
被害者側に過失があれば、自動車保険でおりる保険金は過失相殺によってその分だけ減額されます。
自由診療では窓口で負担した治療費全額に対して過失相殺がなされますが、保険診療では窓口負担分の3割に対してのみ過失相殺がなされます。
つまり、健康保険が負担する部分には過失相殺が適用されないことになります。
この差はかなり大きなものになることがわかると思います。

交通事故の怪我で健康保険を使うには

交通事故のような第三者行為(ケガをした本人に責任がなく、他の誰かに原因がある場合)の場合、そのままでは健康保険適用外となってしまうので、交通事故による怪我の場合に健康保険を使うには、「第三者行為による傷病届」を社会保険事務所に提出する必要があります。