診療報酬は診療報酬点数表に基づいて計算されますが、ここに掲載された点数は2年に1回の割合で改定されます。
この診療報酬の改定は、社会情勢や経済情勢の変化、医療技術の進歩などに対応するために行われるものです。

医療報酬の改定は中央社会保険医療評議会によって行われ、この場で個々の診療報酬点数が議論された上で決定されます。
中央社会保険医療評議会の構成メンバーは20人とされ、内訳は次のとおりです。
1.診療報酬の支払い者の代表(保険者、経営者、労働者)
2.診療者の代表(医師、歯科医師、薬剤師)
3.公益者の代表(学識者)

診療報酬改定の影響

診療報酬の改定は、もちろん我々の生活にも直接的な影響がありますが、医療政策を誘導するというさらに大きな働きもあります。

ある医療行為の点数が引き上げられると、経営上の観点から医療機関はその医療行為の回数を増やします。
政策の根幹にあるのはあくまでも医療費の抑制なので、想定以上に回数が増えた医療行為に対しては、点数を引き下げたり、点数として計上できる回数を制限したりする措置がとられます。
すると、医療機関はその医療行為を他の点数の高い医療行為で代替えすることになります。

また、患者の立場からすると、料金が高くなった医療行為については、避けられるものならできるだけ避けたいと考えるのが当然です。
たとえば、2002年の改定では、一般病床で180日を超える入院の一部負担気が増加したために長期入院患者の減少が見られました。

医療政策と病院経営

こうしたせめぎ合いの中で病院経営は成立しており、それが医療政策の誘導につながっていくということになります。
したがって、病院経営においては、2年ごとに行われる診療報酬の改定に基づいた見直しをする必要があります。
改定後に収益が悪化していく病院もありますが、仮にそうなった場合、その病院の運営が政策にマッチしたものではないということになります。
これは、病院の運営方針の善し悪しにあまり関係がなく、立派な方針を掲げた病院が経営難になる場合もあるので、問題は複雑です。

厚生労働省は1980年代より一貫して入院費を削減する方向で診療報酬の改定を行ってきており、その結果、平均在院数は当初の50日ほどから32日にまで大幅に減少しています。
ただ、政策の根幹にあるのは医療費の抑制なので、国民一人一人が受ける医療の改善につながる方向に医療政策が誘導されているのかどうかは不明確です。